
大腸ポリープ切除
大腸ポリープ切除
大腸ポリープの切除方法には主に以下の3つがあります。
スネアポリペクトミー
スネアポリペクトミーは、大腸ポリープに「スネア」と呼ばれる金属の輪っかをかけて病変を絞めあげ、電気を流して大腸ポリープを焼き切る方法です。主に有茎性ポリープ(正常の大腸粘膜と腫瘍との間に茎を持ったタイプ)もしくは亜有茎性ポリープ(正常の大腸粘膜と腫瘍との間にくびれのあるタイプ)に適した治療法です。
周りの正常な大腸粘膜を含めて確実に一括で取り切れる場合には、無茎性ポリープ(ポリープの根元全体が大腸粘膜についているタイプ)に対しても、この方法が用いられることもあります。
近年では、10mm未満の小さなポリープで、術前の内視鏡診断において良性のポリープと確信できる場合に限って、電気を流さずに切り取る「コールドースネアポリペクトミー」という手法も広く行われています。電気を流す場合よりも術後の出血リスクを低く抑えることができるメリットがある一方で、悪性のポリープには適さない治療法のため、内視鏡医の高い診断能力が求められます。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、主に20mm程度までの大きさの無茎性ポリープを対象とした治療法です。細い針を使ってポリープの下の粘膜下層に特別な液体(例:生理食塩水やグリセリン液)を注入し、病変部を膨らませてからスネア(金属の輪っか)で絞めあげ、電気を流して切除します。
この手法により、確実な一括切除が可能となりますが、一般的なスネアポリペクトミーの技術に加えて、注射の技術や病変の位置どりなど、より高度な技術が求められます。また、切除後の傷はスネアポリペクトミーよりも大きくなりやすく、術後の出血リスクもやや高くなるため、術後は必要に応じて、医療用のクリップで傷を閉じる処置を行う場合もあります。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、主に20mmを超えるような大きなポリープや、早期の大腸がんを、一括して完全に取り除くために行う治療法です。具体的には、粘膜下層に特殊な液体(例:生理食塩水やヒアルロン酸)を注入し、安全域を確保した上で、特殊な電気メスを使用して、病変のある部分を薄く剥ぎ取ってくるような治療法です。
病変の大きさにかかわらず一括で切除が可能な手法ですが、非常に高度な技術を要することや、偶発症のリスクも高いため、専門施設で入院して行われることがほとんどです。
大腸ポリープ切除後は、大腸の中に人工的な潰瘍ができた状態となります。傷は自然に治りますが、一般的に通電を伴わない処置でも術後24時間は術後出血が起こりやすいため、安静を要します。
切除したポリープの大きさや形、切除方法によって、安静期間は異なりますが、激しい運動や飲酒の制限など、生活制限が必要となる場合があります。また抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を飲んでいる方は出血リスクが高いため、より慎重な経過観察が必要です。当院では、術後安静期間が最も短くなるように治療法を選択しますが、個々の安静期間については術後個別にお伝えします。
大腸ポリープの治療後にも、また新たなポリープができてくる可能性がありますので、定期的な経過観察を行うことはとても重要です。特に、悪性のポリープや、10mm以上の大きなポリープ、または小さくても3個以上の大腸ポリープを切除された方には、1年後の経過観察をおすすめしています。それ以外の方は通常2〜3年に1回の大腸カメラが一般的な目安です。
全ての大腸ポリープが大腸がんになるわけではありませんが、一部のタイプは大腸がんへと進行するリスクがあります。大腸がんの原因として最も一般的な「腺腫(せんしゅ)」の場合、がん化率は大きさに応じて異なり、〜5mm:1.8%、5~10mm:9.1%、10~20mm:32.9%、20mm以上:67.8%と報告されています。
また「鋸歯状(きょしじょう)病変」は腺腫とは全く違う経路でがん化することがわかってきました。腺腫と比べると、がん化する頻度は低いものの、がん化すると進行が早いため、予防的な治療の対象となります。
大腸ポリープは、適切な体重管理・飲酒制限・食生活の改善・定期的な運動習慣により、ある程度の予防効果は期待できます。ただし、大腸ポリープは年齢を重ねるとできやすくなり、遺伝的な要素も絡むため完全に予防することはできません。
大腸がんは男女ともに発症頻度の高いがんですが、定期的な大腸カメラで、大腸ポリープを早期発見・治療することによって、将来の大腸がんの多くは予防することが可能です。
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